仮想通貨カジノはなぜ「違法」と言われるのか?~日本の法律の基礎知識~
仮想通貨を用いたオンラインカジノ、いわゆる「仮想通貨カジノ」が違法であるとされる根拠は、日本の刑法第185条および186条に規定される賭博罪にあります。これらの条文は、公衆の場での賭博や富くじの発行、また常習的な賭博を禁じており、原則として賭博行為全般を違法とする立場を取っています。一方で、競馬、競輪、オートレース、宝くじなどは、特別法によって例外として認められた公営ギャンブルです。ここで重要なのは、賭博の対価が日本円であろうとビットコインやイーサリアムといった仮想通貨であろうと、その行為の本質は「財産上の利益を賭ける行為」であるため、法律上の評価は変わらないという点です。
さらに、2018年に施行された「資金決済法の改正」により、仮想通貨は決済手段の一つとして法的に位置づけられました。これは、仮想通貨が単なるデジタルデータではなく、経済的価値を持つことを国が認めたことを意味します。したがって、仮想通貨を賭け金として使用することは、金銭を賭けることと法律的には同義と解釈される余地が極めて強いのです。オンラインカジノの運営会社が日本国内に拠点を置く場合は、明らかに賭博開帳図利罪(刑法186条)に問われる可能性があります。
問題は、運営会社がすべて海外に所在するケースです。ユーザーは「自分は遊んでいるだけ」と考えがちですが、刑法は国外犯規定を設けておらず、原則として国内で行われる行為が対象となります。つまり、日本在住のユーザーが海外の仮想通貨カジノサイトにアクセスして賭博行為を行った場合、賭博罪の成立が議論される余地があります。過去の判例では、賭博罪の成立には「偶然の勝敗により財産の得喪を生じさせること」が要件とされており、仮想通貨が「財産」に該当するかが焦点の一つとなりますが、先に述べた資金決済法の定義から、それは肯定される方向にあると言えるでしょう。仮想通貨 カジノ 違法について理解を深めることは、こうした法的なグレーゾーンを正しく認識する第一歩となります。
海外サイトの利用とユーザーが負う現実的なリスク
多くのユーザーが陥りやすい誤解が、「運営会社が海外ならば安全」という考えです。確かに、日本の警察が直接海外のカジノ運営者を摘発することは困難です。しかし、ユーザー側が刑事罰の対象となるリスクは決して無視できません。これまで、一般的な海外オンラインカジノ(日本円決済)を利用していたユーザーが賭博罪で逮捕・書類送検される事例は複数報告されています。仮想通貨カジノにおいても、その匿名性や秘匿性が高いからといって、まったく同じリスクが存在するのです。
具体的なリスク要因としてまず挙げられるのは、資金流の追跡です。仮想通貨は「匿名」と思われがちですが、取引はすべてブロックチェーン上に公開されており、取引所を経由して日本円と交換する段階で、その履歴が残ります。税務調査や金融当局の調査、あるいは何らかのきっかけで警察の捜査が入った場合、国内の仮想通貨取引所から出金記録がたどられ、カジノサイトへの送金が明るみになる可能性は十分にあります。このように、技術的には取引の流れを追跡できる環境が整いつつあるのです。
さらに、サイバーセキュリティ上のリスクも見過ごせません。違法またはグレーゾーンで運営されるサイトは、当然ながら日本の消費者保護法の対象外です。預け入れた仮想通貨が突然引き出せなくなったり、運営側が詐欺的な行為に及んだり、個人情報が漏洩したりしても、日本の法律による救済は極めて困難です。また、これらのサイトはマネーロンダリング(資金洗浄)の温床となっているケースも多く、知らず知らずのうちに犯罪に巻き込まれる二次的な危険性も孕んでいます。利用すること自体が、思わぬ形で自身を危険に晒す行為になり得ることを肝に銘じておく必要があります。
IR施行法とカジノ解禁の誤解~仮想通貨カジノは対象外~
2018年に「統合型リゾート(IR)整備推進法」、通称カジノ解禁法が成立し、国内にもカジノ施設ができるというニュースを耳にした方も多いでしょう。これにより、「カジノが合法化されたのだから、オンラインカジノも大丈夫なのでは?」という誤った認識が広がる可能性があります。しかし、これは大きな誤解です。IR法で認められているのは、限定的な地域に建設される物理的なカジノ施設のみであり、オンラインカジノについては一切触れられていません。
IR施設内のカジノでは、入場料を支払い、回数制限のある中で、日本人も利用できることが想定されています。しかし、ここで使用できるのは日本円に限られ、仮想通貨が賭け金として利用される予定は現時点ではありません。また、運営は国が厳格にライセンスを発行し、ギャンブル依存症対策など様々な規制がかけられる予定です。これは、無秩序なオンラインカジノ、特に海外の仮想通貨カジノとはまったく次元の異なる、厳重に管理された環境下での営業です。
つまり、IR法の成立は、むしろ違法なオンラインカジノとの線引きを明確にしたと言えます。国が管理下に置いていない、特に海外の事業者が運営するオンラインカジノ(仮想通貨利用を含む)は、従来通り刑法の賭博罪の対象となる可能性が高いままなのです。将来的な法改正の動向に注視する必要はありますが、現状ではIR法と仮想通貨カジノの合法性はまったくの別問題であると理解すべきです。